□2005年春季東京六大学リーグ戦 戦評
2005.4.9~5.31
はじめに
「投手陣は悪くない。打線も、機動力やバントなどを使えば、ある程度の得点が期待できるだろう。三遊間がしっかり守れば(優勝の)チャンスはある」――OB・広岡達朗氏は、リーグ戦を前にしたある日、母校の戦力をこう語っていた。
同氏は、3月初めの沖縄合宿、その後のオープン戦などを通じて選手たちにアドバイスしてきた。野球指導と評論における球界第一人者の言質である。
私は先輩の言葉を思い起こしながら“新生・早稲田”の戦いを追うことにした。
(39年入 六車 護)
4月9日(土) 対 立教大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 1 | 2 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 4 | 9 |
| 立大 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
○大谷、佐竹、宮本―山岡、笹沢 本塁打:武内(ソロ)
<戦評>
早稲田が素早く「勝ちゲーム」の展開に持ち込んだ。2回、先頭の田中幸が中前打、清水が四球でチャンスを拡げると、梁井が中前に落として先制した。3回は前田将の右前打に始まってバント、盗塁などを織り交ぜ田中幸の中越二塁打、北崎の左儀飛などで2点を加えた。
1点差とされた五回は、武内が会心の一発を右翼席に打ち込んだ。新キャプテンは頭髪を短く丸刈りにして決意も新たに望んだ開幕戦だった。九回には梁井の走者一掃の左越三塁打などでダメを押した。
守っては、速めの継投で3投手をつぎ込んだ。先発を任された大谷は三回、遊撃・清水の軽率な送球エラーなどで2点を失った。だが、なおも続いたピンチをしのぎ、リードを守った。佐竹、宮本も気合の入った投球で得点を許さなかった。初戦、まずは順調な滑り出しだった。(S39年入学 六車 護)
4月10日(日) 対 立教大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 立大 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
●越智、中村展、井上―小林、笹沢
<戦評>
150キロ近い速球を投げ、「大器」と言われた越智も最上級生になった。心に期すものは十分にあるだろう。要は、変化球を交え、力み返ることのない投球術を身に付けているかどうかだ。
一回、先頭打者に中前打された。次打者の2球目に暴投(記録は捕逸)して四球を与えた。無死1、2塁。見た目には、「抑えなければ」の気持ちが力みに繋がって制球を乱すなよ、の思いだった。
はたして、3番打者に送りバントを簡単に決められ、4番には外角球を左前にはじき返された。カウントは2-1、ここは高目に伸びのある得意の速球で空振りを取りにいくのが得策と思われた。だが、低目を狙ったのだろうか、タマを置きにいくような感じで威力のない投球を打ち返された。
この場面、投手だけを責めるのは酷かも知れない。捕手もピンチのときに、越智の持ち味である高目球を引き出すリードがほしかった。いつもいつも低目がいいとは限らないのだ。越智は、2死をとった後、暴投で2点目を失った。二回以降、無難だっただけに初回の乱れが悔やまれた。
早稲田は一回裏、前田将と上本が連打、同じように無死1、2塁の好機を作った。しかし、武内以下のクリーンアップが3者連続三振に切って取られた。その後も打線は、相手投手を捕らえ切れず零封負け。九回の1死1、2塁は1塁走者が捕手の牽制球に刺される始末だった。
立教の大川は、速球のスピード計時が130㌔台だったが、カーブ、チェンジアップを上手く織り交ぜていた。何より、コーナーを丹念に突いて、大振りの早稲田打線を完全に手玉に取った。反省、修正点の多い内容だった。(S39年入学 六車 護)
4月12日(火) 対 立教大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 立大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
○宮本―山岡
<戦評>
ここ数年、早稲田の左腕投手には、ひとつの特徴が見受けられる。投球モーションで、右肩が開かず、左腕の出所が分かりにくいことだ。これは打者にとって厄介やことなのだ。和田(ソフトバンク)、清水(JR東日本)、そして宮本へと続く“良き系譜”といってよいだろう。和田の持ち味を後輩たちが参考にして受け継ぎ、自分のものにしたのであれば結構なことだ。
大事な③回戦、宮本がリーグ初完封をやってのけた。雨で足場が悪い中で、投げ急ぎせず、しっかり腕を振って投げた。六回以降は三塁を踏ませない6安打散発のピッチングだった。投球数は120、余力を感じさせて頼もしかった。
得点は相手ミスに助けられた。二回1死、北崎の平凡なゴロを遊撃手がエラー。2死後、梁井が左中間2塁打して先制。山岡の遊ゴロ(記録は内野安打)を再び遊撃手が一塁に低投して梁井が生還した。早稲田のヒットは、この回の2本と五回に出た山岡の2塁打の3本だけ。次戦からは梁井を北崎、清水の前に持ってくる打線の組み換えを考えてよい。(S39年入学 六車 護)
4月23日(土) 対 法政大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 |
| 法大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
大谷、佐竹、○宮本―山岡
<戦評>
「潮目」という言葉がある。「広辞苑」によると、「海面に見える二つの異なった潮流の境目」のことをいう。
勝負事にも、明暗を分ける潮目がある。春の覇権を占う早法1回戦で潮目が変わったのは九回裏、法政の攻撃だった。
1-1の投手戦で迎えたこの回、早稲田はこの回からマウンドに上った3人目の宮本が先頭打者を三振に打ち取り、打順は9番・投手の福山。この春、6大学を代表する投手に成長した福山はそれまで、早大打線を2安打1失点に抑えていた。福山が当然のように打席に入ったのは、法政ベンチが福山との心中を決意し「福山を降ろしたら負け」を覚悟したからだろう。
ところが、宮本が福山を歩かせて、事情は一変する。法政ベンチは福山に代走・伊藤暢を送って勝負に出た。が、はやる伊藤暢は牽制球に刺されてしまった。
それまで2安打7三振に押さえ込まれていた早稲田は延長11回表、救援の下敷領を二死一,三塁と追い詰め、五番山岡がこの日2本目のヒットを左前に飛ばして試合を決めた。
4回まで3安打失点1の大谷に見切りをつけ、佐竹―宮本の総力リレーで守り抜いた早大・應武新監督は「みんなよくやってくれた。ピッチャーさまさまです」と目を細めたが、難敵・福山が四球で歩かなかったらどうなっていたか。野球は、やはり筋書きのないドラマである。(S34年入学 生原 伸久)
4月24日(日) 対 法政大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | R | |
| 法大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
越智、中村展、佐竹、宮本―山岡
<戦評>
前日の1回戦同様、両軍投手陣が踏ん張って、見ごたえのある投手戦を展開した。
早稲田の先発・越智は六回、先頭打者を三塁エラーで出した後、犬童の左越え二塁打で先取点を許したが、その後の二死満塁を何とかしのいで、6回5安打、失点1、自責点0で先発の責任を果たした。
前日に続いて九回からリリーフした3人目の佐竹も登板ごとに自信を深め、今季の成長ぶりを実証した。たとえばこの回、一死二塁から井上、金丸を連続三振に討ち取ったが、いずれも高めの速球をうまく使って、最後は低めの落ちる球で空振りさせた。佐竹は前日も5回から4イニングのロングリリーフで2安打、四球2、失点0に抑えたが、最高148キロの速球を見せながら、要所はストライクからボールゾーンに落ちる変化球でしとめた技術が、昨年まではなかったところだ。
これまでの踏ん張りで、早大投手陣の充実ぶりが証明されたが、対照的だったのが打線の不振。連日の延長戦、計23イニングで11安打、計4点では、投高打低といわれても仕方がない。チャンスに打てないだけでなく、肝心なところでバントや走塁のミスが重なった拙攻は猛省してもらいたい。
象徴的だったのがこの日、6打席ノーヒットの1番。十回には無死一,二塁のチャンスに、バント空振りで飛び出した二塁走者を殺し、十二回にも1死一塁で送りバントに失敗して、結局センターフライに終った。各打者が、それぞれの役目を忠実に果たさなければ、投手陣の力投は報われないだろう。(S34年入学 生原 伸久)
4月25日(月) 対 法政大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 |
| 立大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 2 | X | 6 |
●大谷、中村展―山岡、小林、笹沢 本塁打:武内(ソロ)
<戦評>
0-0で迎えた5回表、早稲田は絶好のチャンスを迎えた。先頭打者が死球出塁のあと盗塁。次の二塁内野安打で三塁を回ったところまではよかったが、二塁手がオーバーランの走者を刺そうと三塁に悪送球。サードは送球を後に大きくそらしたのに、ランナーはあわてて帰塁しただけで、ホームをねらおうとはしなかった。
この間、打者走者も二塁に進んで無死二,三塁とチャンスが広がったが、次打者・9番大谷の遊ゴロは大きくはずんだのに、ここでも三塁走者はスタートを切らず、やっと先制のホームを踏んだのは一死満塁後の犠牲フライのときだった。
それまで2安打無得点にしのいでいた大谷が突然、崩れたのはその裏だ。先頭・金丸の三遊間ヒットに始まって、打者8人に長短4安打と四球でアッという間に逆転の4失点。早稲田は8回、主砲武内が右翼席に打ち込んで1点を返したが、その裏、リリーフの中村展が2ランを浴びて完敗した。
5回の先制点が最小得点に終わったことが、結果として下敷領を盛り立てる法政打線に火をつけたともいえるが、気になるのは、5回の走塁に象徴される早大攻守の消極性だ。春の沖縄キャンプや東伏見球場での練習で後輩たちを指導したOBの廣岡達朗・元西武監督は前日、2回戦の記者席で、大きくはずむゴロを待って捕る内野手に「なぜ前に出ないのか。待って捕って併殺できるわけがないじゃないか」とはぎしりしていた。
早稲田ベンチは連日打線を組み替えて、動きに動いている。が、監督だけが積極的でも、現場の選手が気持ちを前に出さなければ結果は出せない。試合後、應武新監督は「拙攻です」と総括したあと、「あした頑張ります」と語気を強めた。選手も、失敗を恐れず、元気な攻めの野球に徹してほしい。(S34年入学 生原 伸久)
4月26日(火) 対 法政大学 四回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 法大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 早大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
○宮本―山岡
<戦評>
左翼後方の真っ黒な雨雲が、いつの間にか神宮球場の上空をおおい、7回終了と同時に集中豪雨となった。試合中断の時点で1-0で早稲田のリード。引き分けを挟む1勝1敗の決勝戦は、早稲田・宮本、法政・福山のエース対決で、一歩も引かない投手戦だった。
早稲田は2回裏、先頭・梁井が右中間2塁打のあと、捕手のけん制球で二・三塁間に挟まれたが、法政遊撃手の三塁悪送球でホームに向かい、捕手がベースをふさいだ走塁妨害で先制点を拾った。
雨は30分、1時間たってもやまず、中断から1時間半後にようやく試合再開。従来なら、30分たっても雨がやまない場合、コールドゲームになるケースが多いが、学生野球の生き字引、東京六大学野球連盟の長船騏郎事務局長も「1時間半も待って再開したのは記憶にない」と驚いていた。
問題は、この記録的な中断が両校にどんな影響を与えるか。しかし、まだ雨が残るマウンドに上った早大・宮本は、中断などなかったかのような安定した投球を続け、再開後の2回を内野安打1本、3三振に抑え込んで、慶應の加藤と並んで今季3勝目をマークした。
しかもまだ開幕以来失点ゼロ。140キロ前後の速球とコントロールのいい変化球を出し入れする安定感抜群の3年生エースは、試合後「雨が降っていたこともあって、低めに投げることだけを心がけた。沖縄キャンプでは、走ることだけは誰にも負けなかったつもりです」と、絶好調の理由を淡々と語った。(S34年入学 生原 伸久)
4月30日(土) 対 東京大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 1 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 1 | 6 | 1 | 13 |
| 東大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
○宮本、須田―山岡、小林、細山田 本塁打:前田将(ランニング)
<戦評>
≪早大の左腕宮本快投、無失点記録続く≫
早大3回の3点は、下位打線が4連打してあげたものだ。今季初めて見せた内容のある集中攻撃、といえた。まず、風のラッキー2塁打で出塁の田中幸を二塁に置いて、2死後から、梁井以下がいずれもジャストミート。実に効果的に得点していった。
東大の先発松岡は、普通の投法より、さらに低い下手投げ。今季は、各カードの初戦に起用されるほど、安定性もある。球速こそ、120キロ台とあまりないが、低めにカーブ、シンカーを投げ分ける。この日は、残念ながら、初回に2死三塁から、遊ゴロ失で先取点を許した。一つのミスが、投手松岡の読みに、迷いを生じさせたのだろう。
後半、拙攻が続いていた早大打線だが、8回に前田将のランニングホーマー、生島の走者一掃の三塁打など一挙6点。結局は17安打、13得点。いずれも今季最高の攻めで、大勝した。
投げる左腕宮本は、速球とカーブ、シンカーを巧みに投げ分け、8回を零封。内容は被安打2、1四球、11奪三振のほぼ“完封”劇。これで開幕以来、31回2/3無失点を続けている。リーグトップの4勝目はお見事。これまでの大黒柱大谷を抜いて、すっかり早大のエースに成長した。
試合後、宮本は「ストレートに伸びがあり、あとは変化球を交えて、打たせてとるピッチングをした。無失点のことは知っているが、それより勝利が優先します」とインタビューに応えていた。たのもしい限りだ。(S27年入学 酒井 敏明)
5月1日(日) 対 東京大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 東大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | X | 3 |
○佐竹、越智―山岡
<戦評>
早稲田が逆転勝ちした。試合の経過からみれば2回に失った1点を追いかけ、7回に2点を挙げての勝利だが、内容を考慮すると、辛くも勝ちを拾ったといえる試合だった。
東京は2回、先頭の荻田が左前安打、一死後淺野が三塁右を破り、黒江の一ゴロで二死1,3塁としたあと山田が左前に適時打して1点をとった。
早稲田の先発・佐竹は初回を一ゴロと2三振で上々の立ち上がりだった。だが、2回は相手を追い込んだあとの勝負球がいずれも高目に入り、痛打を浴びた。3回以降7回まで1安打と無難な投球をみせただけに、気負いがみられた2回の投球が惜しまれる。
早稲田は打線もよくない。1回は四球の前田将が二盗したものの上本の一塁前送りバントで三塁に刺された。2回は中前安打の生島が次打者の初球に二盗失敗。3回には失策、四球からつかんだ一死2,3塁の同点機に四番の田中幸が1-2から内角シュートにつまって二飛。相手の投手も苦しんでいるのに、あせりから難球に手を出して凡打していたのはいただけない。
7回の逆転は代打松本の四球からで、二死2塁とし、上本が2-0と追い込まれながら右翼線に落とし同点。二人目の左腕・重信に武内が変化球を左中間に軽打して決勝点とした。
投手・打者とも力を抜いても、投手はコントロール、打者は適確なミートの大切さを実感できただろうか。無傷で迎える次の明治戦に期待したい。(S27年入学 増田 稔)
5月14日(土) 対 明治大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
| 明大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1X | 2 |
●宮本―山岡
<戦評>
同点で迎えた九回裏、明治は先頭の下山が三遊間安打。バントで送られ、一打サヨナラの好機をつかんだ。四番の齋藤達に対し、一塁を埋めて併殺をねらうか、強気の勝負に出るか、早稲田ベンチの出方が注目された。投手の宮本は初球からストライクをとり、攻めに出た。2球目を空振りにとり、2-0。3,4球目はボール球で誘い、2-2。ところが勝負球になる5球目を齋藤達の左肩に当ててしまった。宮本は3回以降、冷静な投球をみせていたが、1点も許されない場面でリキみが出たようだ。二塁走者の下山は清水慎の3球目に三盗をねらい、成功させた。これが明治の勝因にあげられる。
早稲田は満塁策をとる。
大久保は初球空振り、2球目ボール後の3球目、つまりながら左中間に落としサヨナラ勝ちとした。
明治は先発の清代が5回まで四度のピンチを招きながら1失点で踏ん張り、6回から同じ左腕の古川と継ぎ、早稲田の攻撃をかわした。
早稲田は6回まで9残塁。弱点視されていた得点力の低さがまた出てしまった。
なお、今季無失点を続けていた宮本は34イニングス目で初失点を許した。(S27年入学 増田 稔)
5月15日(日) 対 明治大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 明大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 早大 | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 | 1 | 3 | 0 | X | 8 |
○越智、佐竹、大谷―小林 本塁打:越智(ソロ)、松本(3ラン)
<戦評>
明大先勝のあとの第2戦、両チームとも2番手投手の起用となった。当然のように、立ちあがりが注目された。後攻めの早大は、制球力にやや不安のある越智の登板。先頭打者への第1球は、高いボール球だった。それを、明大三浦は手を出し、越智は助けられた。この回、3者凡退に切り抜けると、越智は勢いに乗り、ぐんぐん飛ばしていく。
最速148キロの豪球をビシビシ決める。明大打線の早打ちにも救われたが、それだけ越智の制球に威力があったのだろう。6回まで被安打2、奪三振6、1死球、79球の見事な内容で、佐竹、大谷とリレー策。結局越智は一昨年の秋以来、3季ぶりに勝利の味をかみしめた。「ビデオで好調時のフォームを見て、直した」といっていたが、長い勝利の瞬間だった。
逆に明大水田は、先頭の前田将を歩かせ、投球のリズムをくるわせた。早大打線が、すかさずつけ込み、武内の右翼線2塁打。3回には越智のびっくりホームラン。5回には武内の右中間2点2塁打(2人目竹岡から)と続き、ほぼ試合を決定づけた。投手の微妙な変化が、野球の流れを変えてしまう、立ちあがりの明暗シーンだった。
後半は、早大投手陣の好リレーもあって、ワンサイドゲーム。7回は、代打松本(1年、千葉経大付)が、明大4人目新海から右翼へ3ランを放つなど、若い選手の活躍が光った。松本の父・吉啓さんは、元明大主将を務めた人。松本自身は「父の明大を特に意識しません。ホームランは嬉しいが、ほんとうは投手も大好き」と笑顔で話していた。たのもしい限りだ。(S27年入学 酒井 敏明)
5月16日(月) 対 明治大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | 6 |
| 明大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
宮本、○佐竹、越智―山岡
<戦評>
早稲田の決勝点は、明治の連続ミスから生まれた。八回、山岡が三ゴロ一塁悪送球で一挙二進。梁井の送りバントを捕手が一塁に悪送球した。明治はここで満塁策をとった。早稲田は投手の佐竹に代打鴛海を送り、2球目に死球で1点。竹内も2-3から四球で2点目。前田将は投ゴロの併殺で二死2,3塁となったが、上本が左中間安打して二者が還った。この回わずか1本の安打で4点が入り勝負はあっけなく決まった。
早稲田が四回に山岡の右翼線に落ちるラッキーな三塁打を足場に先取点。五回にも宮本の打撃妨害から四球で得点機をつかみ、スクイズで2-0とリードした。だが、好投の宮本が五回、二死から四球、二ゴロ失のあと宇津野に右越え二塁打されて試合は振り出しに戻った。宮本がこの回二死から三浦に与えた四球は、カーブで2-0と追い込んだあと、直球勝負で2-3とし、6球目にカーブを投げたがボールになったものだ。相手の逆をとった直球勝負もわかるが、安全策をとって、カーブ勝負に出ていれば、失点は防げたのではないか。
これで早稲田は慶應と並んで勝ち点4。早慶戦は1978年(昭和53年)秋以来のお互いに完全優勝をかけた戦いとなる。ちなみにこのときは早稲田が勝ち優勝している。(S27年入学 増田 稔)
5月28日(土) 対 慶應大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
| 慶大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 2 |
○宮本―山岡 本塁打:田中幸(満塁)
<戦評>
≪田中幸が早慶戦史上6本目の満塁アーチ≫
神宮の杜を薫風がわたる土曜日、早慶戦は3万5000人のファンと学生で埋まった。
昭和53年秋以来、27年・53季ぶりに、勝ち点4同士で覇権を競う早慶戦。慶応の先発投手は2年の勝ち頭・加藤(5勝1敗)ではなく、4年の合田(1勝1敗)だった。
今季後半、復調の兆しが見えてきたとはいえ、かつての精彩を欠く元エースは、初回、無死2塁のピンチを早稲田の拙攻に救われた。3回は1死二塁、4回も1死3塁のピンチをしのいだものの、5回につかまる。
この回、早稲田は3四死球で2死満塁のあと、4番・田中幸が内角から入ってくるスライダーを左翼・慶応応援席にライナーで叩き込んで試合を決めた。
2年生の田中は昨年、2打席連続ホームランの衝撃的なデビューを果たし、応武新監督が今季から4番に抜擢した。宇和島東高時代に32本塁打という天性の長距離打者だが、今季は前週まで打率.195、本塁打0の不発弾だった。この日も、ヘッドアップの三振やファウルが目立っていたが、「打ったのはスライダー。狙っていた」というから、ツボにはいった一発だろう。早慶戦100年超の歴史で、満塁アーチはわずかに6本目。応武監督が辛抱して使い続ける新大砲は、強運の持ち主でもある。
緒戦はこの1発で決まったが、早稲田のエース・宮本の力投も忘れてはなるまい。味方の満塁アーチに気が緩んだか、6回と9回にソロアーチを許したが、5回まで2安打無失点で試合を作った安定感はさすが。これで慶応・加藤の5勝1敗とぴったり並んだ。(S34年入学 生原 伸久)
5月29日(日) 対 慶應大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 慶大 | 1 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 6 |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 4 |
越智、佐竹、●大谷―小林、山岡
<戦評>
≪投手のカバーミスで狂った歯車≫
野球は立ち上がりのできふできが勝敗に直結することが多い。
一気に歴史的な完全優勝を決めたい早稲田は、未完の本格派大器・越智の剛速球に期待をかけたが、1回表、先頭・渡辺にいきなり内野安打を許してリズムが狂った。速球に詰まった1、2塁間のゴロは、1塁・武内がさばいたのに、越智のベースカバーが遅れたのだ。送りバントと四球で1死1、2塁とされたあと、当たり屋・岡崎に左前に打たれて先制点を許してしまう。
この回は後続を併殺でしのいだものの、3回には先頭を歩かせた後、盗塁とバントの1死3塁で大伴にライト線の2塁打を許して2点目。岡崎にも1、2塁間を抜かれて1、3塁のピンチが続くと、バックネット直撃の暴投で傷を広げた。
越智は結局、5安打、四死球4、失点3で3回しかもたなかったが、今季は不調だったわけではない。4年目を迎えた越智は前週まで5試合で1勝1敗。防御率0.78は、力に頼らない成長を示していた。それがこの大一番で一変、りきんで制球を乱して自滅という悪癖がでたのだから、「早慶戦の魔性」に負けたとしかいいようがない。そして悪夢は、最初のカバーリングミスから始まった。
早稲田の異変は、同点に追いついた直後の7回にも起こった。この回からリリーフした右のエース・大谷が、送りバントを挟んで4四死球の乱調で2失点。8回からは立ち直って、計3回をノーヒットだったから、應武監督が「どうしたんだ」と驚いたのもむりはない。
この日も観衆は3万7000人で連日の満員。27年ぶりの早慶完全優勝争いは、第3戦でいよいよファイナルアンサーがでる。(S34年入学 生原 伸久)
5月31日(火) 対 慶應大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 4 |
| 慶大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
○宮本、佐竹―山岡
<戦評>
≪3季ぶり37回目のV。"MVP"は左腕・宮本≫
早慶戦は、なにが起こるかわからない。4-1で迎えた8回、慶応は代打・金森宏が右中間に特大アーチをかけたが、本塁を踏み忘れて幻のホームラン(記録は三塁打)。早稲田は大黒柱・宮本に疲れがみえていただけに、この珍記録がなかったら、試合はどうなっていたかわからない。
早稲田は山岡の左前タイムリーで先制。4回には2死から前田将のレフト線二塁打で2点、6回にも上本の左前タイムリーで1点を加えた。
1回戦完投勝ちの宮本は3回まで4奪三振のパーフェクト。4回に内野ゴロで1点を許したものの、8回を3安打1点に抑えて6勝目。早稲田は27年ぶりに迎えた早慶勝ち点4決戦に勝って3季ぶり37回目の優勝を飾った。
ベンチ前で3回胴上げされた応武新監督は「学生(選手)のために、なんとしても勝たせてやりたかった。ベンチに入れなかった4年生や裏方のスタッフも含めて、みんなに心から感謝したい」と、就任早々の歴史的な勝利をかみしめた。そして「3塁までいってもなかなか帰せないイライラはありましたが、今季は打線より、投手に助けられてきた。うちらしいといえばうちらしい」と苦笑いした。
10勝4敗1分の完全優勝だったが、リーグの打撃ベスト10にはいったのは8位の上本(打率 .288)だけ。3割打者のいない早稲田を勝利に導いたのは、投手陣、とりわけ3年生左腕・宮本の力投だった。
宮本は10試合6勝1敗、防御率0.73で「最優秀防御率賞」をゲットしたが、「いつもキャッチャーの山岡さん、一塁の武内さん、センターの梁井さんがマウンドにきて声をかけてくれた。このひとたち4年生のために勝ちたい、と思って投げてきました」とくりかえした。
しかし、べンチ前で胴上げが続く早大ナインを見ながら、明大OB会の幹部が言った。「早稲田さん、おめでとうございます。でも、秋はうちがいただきますよ」。秋の戦いは、もう始まっている。 (S34年入学 生原 伸久)
